疾走
主人公は、干拓地“浜”に住む心優しい中学生のシュウジ。幼いとき、両親が自殺した孤独なクラスメイトのエリや、弟を殺人者にしてしまった重荷を背負いながらシュウジとエリを導く“沖”の神父との交流。やがて大好きな出来のいい兄・シュウイチが挫折の後に起こした放火事件から家族は離散し…。
「誰か一緒に生きてください」
エリとは対照的で印象的だったシュウジの言葉。
久しぶりに主人公が救われない物語。いや、最後の電話で救われたのか…。
少なくともエリはシュウジの存在によって希望を見いだせたんじゃないか…。
あまり感情を表に出さない、どこか無機質にも見える主人公たち。
客観的に映し、観る者に人物の心情を想像させるような描き方。
悲しみと、傷つきやすさの中にも傷を抱えているから故の強さを秘めているようなシュウジとエリ。
希望や人との繋がりを求めた、痛々しい心の叫び。
一人ぼっちになったシュウジや、諦めにも似たような姿勢で生きているエリが可哀相でならなかった。
犠牲になる子供、歪んでしまう心。
シュウジがプライドの高い兄・シュウイチのことが大好きだというのが意外だった。
客観的に見て、兄の性格も両親の期待のかけ方も嫌に感じた。
でも、シュウジはシュウイチのことで喜ぶ両親を見るのが好きなんだな。
どこか自分という存在を一歩引いて、閉まいこんでいるように見えるシュウジ。
そんなシュウジの心情を客観的に表わしているようなモノローグが物悲しくもあった。
闇から、希望を求めて、「疾走」した15才の「お前」。
テゴシ君、いい味出してるよ。エリ役の子も。評判通り、中谷美紀の関西弁も違和感なく。
自分のことを「お前」と言うシュウジのモノローグが印象的だった。
『害虫』が少しよぎったストーリー。
最後に未来への光のようなものはあったが、悲しい結末だった。